暗闇を魅せる、幻想的な明かり

高知城三の丸広場を舞台に繰り広げられた夜間限定のショー。音楽と光に合わせて噴水が高く上がる噴水ショー、空中ブランコ、綱渡り、マジック、ジャグリング、ベリーダンスなど盛りだくさん。パフォーマーが観客の目線を次のパフォーマンスにつなぎ、息つく暇もないほど。妖しい光に彩られた高知城も会場の雰囲気を盛り上げます。華麗な衣装に身を包み、メークをしたパフォーマーたちが闊歩する場内は、絵本の中に迷い込んだような不思議な世界。暗闇から突然ホーミーが低くなり始め、ベリーダンスが始まると、異国情緒もたっぷり。非日常のひとときは、単に「観る」ショーではなく、一緒に楽しい時間を過ごす体感型のイベントとなりました。会場は懐かしい電球色の光で彩られ、幻想的な雰囲気。闇に浮かぶような照明で、ちょっとした怖さもあります。

RKC高知放送様の場合

「水と光のカーニバルナイト」は、高知市観光協会主催、RKC高知放送が企画・運営を手がけた新たなイベントです。企画・構成を担当したRKC高知放送の溝渕絵里さんと、弊社担当者に話を伺いました。

経営開発室 経営戦略課 課長代理 菅野乃美
株式会社高知放送 営業局 営業推進部 主任 溝渕絵里

——— 溝渕さんが菅野に依頼されたきっかけについて教えてください。

溝渕 以前、宮地電機さんに当社のクリスマスツリーを作っていただいたことがご縁の始まりです。私がクリスマス関連のあるイベントを手がけることになり、空間デザインに長けた方を探していたところ、社内で「宮地電機に菅野さんというすごい人がいる」と教えてもらいました。会ってお話ししてみると、都会的なセンスがあり、遊び心もあり、もちろん照明の知識もある。この人についていったら間違いないと思いました。ちょうどその頃、高知市観光協会さんから音楽噴水ショーを開催したいというお話があり、いろいろとアイデアを出す中で、「不思議の森」をコンセプトに、水と光と噴水にサーカスを絡ませたイベントを発案しました。コンセプト、キャッチコピー、タイトルもほぼ決まっていたのですが、このまま突き進んで成功するのかという不安があったんです。成功に導くためにはどうしたらいいのか、菅野さんに助けを求めました。

菅野 溝渕さんと思いを共有し、商品選定も任せていただきました。照明の部分だけでなく、演出の中身、コンセプトワークまで相談してもらえたことは嬉しかったです。イベント全体に関われたことで俄然“我が事”となり、顧客満足度を高めるために何でもやってやろう!という気持ちになります。これは溝渕さんの“周りを巻き込む力”だと思います。最初に、噴水とサーカスをつなぐ照明と聞いて、白熱球を使った電飾が頭に浮かびました。20年以上前に見た、あるアーティストのPVに出てくるワンシーンです。砂漠の町のカーニバルのような場面で、たくさんの白熱球が吊られているのがエキゾチックでゾクゾクしました。いつかやってみたいと思っていて、三の丸で実現できると思うと、いろいろとアイデアが湧いてきて‥‥。
勝手にしゃべっていると、溝渕さんがポロポロと涙を流したんです。「これでいいのか、どうすればいいかと悩んでいたけど、私のやってることって楽しいことなんですね」と。この言葉に心を撃ち抜かれ、この人の気持ちにどこまでも応えたいと思いました。

溝渕 私も最初はワクワクしていたんです。SEKAI NO OWARIの「炎と森のカーニバル」のPVのような世界を作りたいと思っていました。でも、実際に進み始めると、荷が重すぎてどんどん不安が募っていきました。そんな時に菅野さんが、おもしろいと思う、あんなこともできる、こんなこともしたらいいと言ってくれて、ほっとしました。もう一度前向きに頑張れると思いました。

——— 熱量が伝わってくるお話です。具体的には、どのような照明を提案したのですか?

菅野 二人で話すうちに一致したのが、「明るすぎない光」「暗闇を感じられる光」です。絵金まつりのおどろおどろしい絵とゾクッとするような暗がり。怖かったけれど、大人になった私は魅力的なものとして記憶していました。そういう、心の底に引っかかる、何かの時にふと思い出す、「不気味でおもしろかった」と思える世界にしたいと思いました。

溝渕 本当にそこは同感です。子どもの頃の「引っかかるもの」って財産です。今回、演者の一人であるベリーダンサーのタカダアキコさんも同じことをおっしゃっていました。

——— 熱量が伝わってくるお話です。具体的には、どのような照明を提案したのですか?

菅野 二人で話すうちに一致したのが、「明るすぎない光」「暗闇を感じられる光」です。絵金まつりのおどろおどろしい絵とゾクッとするような暗がり。怖かったけれど、大人になった私は魅力的なものとして記憶していました。そういう、心の底に引っかかる、何かの時にふと思い出す、「不気味でおもしろかった」と思える世界にしたいと思いました。

溝渕 本当にそこは同感です。子どもの頃の「引っかかるもの」って財産です。今回、演者の一人であるベリーダンサーのタカダアキコさんも同じことをおっしゃっていました。

——— 菅野さんにとっても初めてのLEDボール球による電飾照明でしたが、設営など順調に進みましたか?

菅野 いえ、失敗してやり直しました。サーカスの現場は初めてで、会場の仮図面は手元にありましたが、どの高さに何がどんなボリュームで立ち上がってくるのか、まったく読めませんでした。噴水、ステージ、空中ブランコ、マジックハウスなど、すべての設営が終わった後で現地に入らせていただきました。与えられた時間は2日間のみ。初日に高所作業車で高い位置の電球を取りつけ、2日目に仕上げをする予定でした。LEDのボール球を使うのも初めてでしたが、イルミネーションは何度もやっているので、その経験則に基づいて進めました。予算分のイルミネーションを広く薄く使うとカッコ悪くなるので、1カ所に集中させるのが私のやり方で、今回も同様にボール球を3本の木に集中的に付けました。木を傷めないよう、黒い布を巻いた上に付けていくのですが、その日は土砂降りの雨で、終わった頃にはみんなボロボロでした。しかし点灯してみると、違うんです。私が作りたい世界ではありませんでした。悶々としながら家に帰りましたが、納得がいかず一睡もできませんでした。考えた結果、「ここで妥協したら宮地電機の仕事ではない」と思い、朝8時半に業者さんに電話して、「やり直したいのでもう一度高所作業車を出してほしい」と平身低頭でお願いしました。ボール球を、集中させるのではなく、パフォーマンスをする見せ場をつなぐように配置し直したところ、思い通りの世界観を描くことができました。みなさんにはご迷惑をおかけしましたが、ボール球とイルミネーションの扱いの違い、見せ方の違いがわかったことは大きな学びとなりました。

溝渕 2日とも大雨の中、ありがとうございました。噴水とサーカスをつなぎ、全体を一つのアトラクションにまとめてくださったのは、菅野さんです。噴水、ステージを組んでいる間、どんなものができるんだろうとドキドキしていました。その隙間を、ボール球やフォトスポットで上手に埋めてくださいました。

菅野 木には光が拡散するフロストタイプを、三角トラスや空中ブランコには輝きの強いクリアタイプを付けました。ボール球の光度は、付ける場所、玉数、対象物によっても違ってきます。サーカスの技は危険が伴います。照度が足りないのではないか、光源が眩し過ぎないかなど、すごくドキドキしましたね。パフォーマーの“とっつ”さんが「いい雰囲気でした」と言ってくださって、ほっとしました。

溝渕 私はサーカスといえば白熱球だ!と思っていたので、今回の光はイメージ通りでした。特に三角トラスのところが好きで、聖地・聖域という雰囲気がとても気に入っています。

——— 菅野さんにとっても初めてのLEDボール球による電飾照明でしたが、設営など順調に進みましたか?

菅野 いえ、失敗してやり直しました。サーカスの現場は初めてで、会場の仮図面は手元にありましたが、どの高さに何がどんなボリュームで立ち上がってくるのか、まったく読めませんでした。噴水、ステージ、空中ブランコ、マジックハウスなど、すべての設営が終わった後で現地に入らせていただきました。与えられた時間は2日間のみ。初日に高所作業車で高い位置の電球を取りつけ、2日目に仕上げをする予定でした。LEDのボール球を使うのも初めてでしたが、イルミネーションは何度もやっているので、その経験則に基づいて進めました。予算分のイルミネーションを広く薄く使うとカッコ悪くなるので、1カ所に集中させるのが私のやり方で、今回も同様にボール球を3本の木に集中的に付けました。木を傷めないよう、黒い布を巻いた上に付けていくのですが、その日は土砂降りの雨で、終わった頃にはみんなボロボロでした。しかし点灯してみると、違うんです。私が作りたい世界ではありませんでした。悶々としながら家に帰りましたが、納得がいかず一睡もできませんでした。考えた結果、「ここで妥協したら宮地電機の仕事ではない」と思い、朝8時半に業者さんに電話して、「やり直したいのでもう一度高所作業車を出してほしい」と平身低頭でお願いしました。ボール球を、集中させるのではなく、パフォーマンスをする見せ場をつなぐように配置し直したところ、思い通りの世界観を描くことができました。みなさんにはご迷惑をおかけしましたが、ボール球とイルミネーションの扱いの違い、見せ方の違いがわかったことは大きな学びとなりました。

溝渕 2日とも大雨の中、ありがとうございました。噴水とサーカスをつなぎ、全体を一つのアトラクションにまとめてくださったのは、菅野さんです。噴水、ステージを組んでいる間、どんなものができるんだろうとドキドキしていました。その隙間を、ボール球やフォトスポットで上手に埋めてくださいました。

菅野 木には光が拡散するフロストタイプを、三角トラスや空中ブランコには輝きの強いクリアタイプを付けました。ボール球の光度は、付ける場所、玉数、対象物によっても違ってきます。サーカスの技は危険が伴います。照度が足りないのではないか、光源が眩し過ぎないかなど、すごくドキドキしましたね。パフォーマーの“とっつ”さんが「いい雰囲気でした」と言ってくださって、ほっとしました。

溝渕 私はサーカスといえば白熱球だ!と思っていたので、今回の光はイメージ通りでした。特に三角トラスのところが好きで、聖地・聖域という雰囲気がとても気に入っています。

——— お二人がうまく嚙み合って、相乗効果でよいものができ上がったように思います。

溝渕 今回は、菅野さんはもちろん、主催の高知市観光協会さん、クロワッサンサーカスさん、舞台照明のコールさん、噴水屋さん、プロのみなさんのアイデアが見事に融合しました。どんどんいいものになっていきました。演者さんたちが日々刺激し合い、そこでセッションが生まれるパフォーマンスもよかったです。イベント全体が日々ブラッシュアップされて、私が思い描いていたより10倍も20倍もいいものになりました。菅野さんからいただいたおばけハウスと、そこにプレゼントのお菓子を吊るすアイデアもよかったです。当初は予算がなくてお菓子のプレゼントはできないことになっていましたが、観光協会の担当さんが「どうしてもやりたい」と言ってくれました。

菅野 これまでの経験上、何かアイデアを出したとしても「管轄外」として聞いてもらえないことが多かったのですが、溝渕さんは「そのアイデアください!」と言ってくださいました。本当にやりがいのある、楽しい現場でした。

溝渕 それは、菅野さんが素晴らしいセンスとアイデアをお持ちだからです。これからも頼りにさせてください!

菅野 今後ともよろしくお願いいたします。

——— 本日はありがとうございました。

○ インタビュー・文章 深田美佳 / ○ 写真 釣井泰輔「ツルイスタジオ」・宮地電機 / ○ 取材日 2022.10.12

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水と光のカーニバルナイト

今宵、高知城で何かが起きる!?
音楽噴水ショーに空中ブランコ、綱渡り・・・
何が飛び出すか分からない おもちゃ箱のような23日間!
【開催期間】2022年10月1日(土)~10月23日(日)
【開催場所】高知城・高知公園 三ノ丸

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